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2024年5月12日日曜日 22時~NHK BS BSP4K【プレミアムドラマ】「老害の人」(2)です。

「老害」とは、何とストレートな、直球・ど真ん中なタイトルでしょうか!

・・・と、5月5日日曜日、こどもの日に鼻歌混じりで(1)を見た筆者は、虚を突かれた思いでした。

要は「老害」を撒き散らす「典型的高齢者」がカタログとかサンプルの様に陳列されるのです。

ドラマに登場する演者さんたちも、かつては青春ドラマで見かけた顔だったりします。

ドラマで老害を振りまく老人仲間を簡単に紹介します。年齢はプロフィール等公式に発表されている実年齢です。

以下は、自戒をこめて否定的な記述もありますが、御宥恕ください。

・戸山福太郎:役 伊東四朗(1937年6月~)もうすぐ87歳

このドラマの主人公。父から継いだボードゲームの老舗「雀躍堂」の社長でした。2017年(平成29年)に細君(やえさん)が亡くなったタイミング(お通夜)で自ら引退を表明。娘明代(夏川結衣)の配偶者、つまり義理の息子純市(勝村政信)に「三代目社長を譲って完全に会社経営からは手を引く」とカッコ良く宣言したのです。しかし、結局は会社に自ら「経営企画室」なる部署を作っておさまってしまいます。社員からは昔の自慢話を聞かされるので煙たがられています。

・吉田武:役 前田吟(1944年2月~)80歳

妻の桃子といつも一緒にいるラブラブカップル。元は印刷所勤務。俳句が趣味。声が大きく騒がしいけれど明るい老人。機会を見つけては月並み俳句を披露します。

・吉田桃子:役 日色ともゑ(1941年6月~)もうすぐ83歳

吉田武の妻。絵を描くのが趣味。初回では「印象派に影響された」と言って(亡くなったやえ夫人の)肖像画をプレゼントしていました。しかしその絵画は、ダンナの月並み俳句と並び立つ技量と言っても過言ではありません。(笑)しかも困ったコトに、二人は互いの俳句と絵画を無闇に褒め合うのです。

この三人の「老害」は、「自覚が無い」と言うコトに尽きます。

戸山福太郎:役の伊東四朗さんには、「他人に自分勝手な価値観を押しつけて、相手の価値観を無視している」という自覚が全くありません。

吉田夫妻には「他人からの評価」という「俳句や絵画が存在する理由」が全く抜け落ちています。趣味で楽しむなら「自分の勝手」で済みます。しかし、その「出来映えの評価を考慮しない(できない?)」のですから、他人に「プレゼント(無理やり渡す)」しては、タダの迷惑です。もちろん夫妻は相手が喜んで当然であると信じていて、創作物の価値(第三者的な評価)なんてカケラも想像していません。

・林春子:役 白川和子(1947年9月~)76歳

1970年代「にっかつロマンポルノの女王」が登場したのには正直ビックリしましたが、半世紀前の女王ですものね。今やお婆さんです。

彼女は異常に健康体なのにいつも「死にたい」と言い続けています。要は「他人に自分を気にして欲しい」という最も一般的な「老害」です。出版社勤務の娘里恵(羽田美智子)との二人暮らしで、娘がいつも一緒についてきます。

・竹下勇三:役 小倉蒼蛙(1951年10月~)72歳

60年代後半~70年代の青春ドラマに必ずと言って良い程登場してナイーブな青年役をやっていた小倉一郎さんです。2023年に重病を克服し蒼蛙(そうあ)と改名されました。

クリーニング屋の御隠居、息子が店を継いでいます。この人は、病気自慢。「糖尿病で足を切る寸前までいった、大腸ポリープで内視鏡手術2回やった、白内障の手術やった」と何回も言っています。しかし4人のグループでは、最も穏当でマトモな老人の様に(今のところは)見えます。

(2)で登場したのが、

村井サキ:役 三田佳子(1941年10月~)82歳

元は家庭科の先生。ここからは(2)での登場から・・・。

主人公の福太郎が孫の俊(望月歩)がバイト先で作っている野菜を使うレストランで孫とランチを食べていると「前回来た時にミントの葉は入れないでと頼んだのに料理にも入っている」と怒って金を払って食べずに出て行った老婦人がいました。

その老婦人がコロナワクチン接種会場受付で「接種券を持っていない方は接種を受けられません」と言われて受付の人の名札で名前を呼んで「(高齢者に接種をするという)目的よりも(接種券を持参するという)手続きを優先するのか」と怒っていました。娘に付き添ってもらって後に並んでいた福太郎が、受付と老婦人の間に割って入ります。

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そして村井女史に名刺を渡し「態度に感心した、仲間に入らないか」と誘います。

村井女史は「公民館 元館長」という不思議な名刺を渡し「そこらのジジババと同じ空気を吸うとジジババが感染するんです。空気感染は疫病だけじゃない。」と断りました。

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村井女史はとても怜悧なのかもしれませんが、好戦的過ぎて、およそ人に好かれる態度とは思えません。

一方、(2)で福太郎は、老害の「現実的な被害」を発生させます。

デジタル化の波に乗る新興ゲーム会社とようやく契約できたと老舗「雀躍堂」の純市社長以下社員は胸を撫で下ろしています。

そこに偶然挨拶に来た新興ゲーム会社の若い経営者。

福太郎は、彼らに恩着せがましく若者を指導してやろう的な言葉を述べます。引く手数多の中から自分が子供の頃に遊んだ「雀躍堂」に救いの手を差し伸べたつもりの若手経営者は、怒って契約を破棄してしまいます。

純市社長は激しく落ち込みますが、福太郎は「ピンチをチャンスに変えろ」と無意味な精神論を言うばかり。娘の明代に「老害だ」と厳しく言い渡されたのです。

明代は言い過ぎたと後悔しますが、コロナ・ウィルス禍で日々は過ぎて逝きます。

突然、福太郎の仲良しグループの吉田桃子がコロナに感染し緊急入院。夫の武は、タダでさえ人手不足でてんてこ舞いの病院で壁にすがりついて妻の名を呼ぶ大迷惑爺さんになっています。どうにか連れ帰ったのも束の間、武は逃げ出して・・・。

・・・と「老害」のサンプルが陳列されました。しかし、理想の老後の生き方的なサンプルも登場します。それがトップ画像。福太郎の孫俊のバイト先、脱サラで美味しい野菜を作る「松木ファーム」の松木夫妻です。

俊は大学に進学せずに農園で野菜作りを学ぶと言い出します。純市は、農園を経営する松木さんに会いに行き息子のコトを頼んだのでした。

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老害のサンプル集と言いましたが、実は、若者も中年も程度の差こそあれ、同様の迷惑を撒き散らしているのではないか、というのが筆者の自戒をこめた感想です。

笑って見ていましたが、自分は本当に笑えるの?

やれやれ。

文:鉄道チャンネル住田至朗

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