©NHK

2024年5月12日日曜日 総合20時~「光る君へ」(19)「放たれた矢」です。

内大臣藤原伊周(三浦翔平)を抜いて右大臣になった道長(柄本佑)は、公卿の頂点に上りました。一条天皇(塩野瑛久)が道長に「なぜ関白にならないのか」と問います。

道長は応えました。

「関白は陣定(じんのさだめ)に出ることができません。自分は、天皇からの下問に公卿たちが各々意見を述べる陣定に参加し、共に考えたい。公卿たちの思惑・動向を理解しなければ、真に天皇を補佐することなどできないからです。」

一条天皇は「これまでの関白とは違うのだな」と感心します。この帝、聰明であらせられるのです。

まひろ(吉高由里子)は、弟惟規が借りて来てくれた宋の白氏文集「新楽府」を懸命に筆写しています。宋という国の科挙制度に深い共感を寄せながら。

一条天皇は、疫病に苦しむ民からの申し出「税免除」を受け入れたいと下問しました。陣定で公卿たちは天皇の意に従って賛意をしめします。しかし伊周は「甘やかせば民はつけ上がる、施してやる必要など無い」とはねつけます。

道長は「苦しむ民を思いやることこそ上に立つ者の使命である」と述べ「皆の意見を天皇に伝える」として陣定を終わらせました。公卿達は満足そうに退いていきます。

しかし伊周は突然「父道隆と叔父道兼を呪詛したのは右大臣殿か」と道長に言いがかりをつけます。

©NHK

「姉である女院様を動かして帝を誑(たぶら)かしたのも右大臣殿であろう。女院様を使って中宮様に無理強いするのも止めろ」と道長に掴みかかったのです。

あっさりと伊周をかわした道長は静かに去ってゆき、公卿たちは無様な伊周から目をそらしました。

この出来事もかなり不思議です。位では下の伊周が道長を罵倒し、内裏で掴みかかっても何の咎めも無い? 

まぁ、道長が無視したダケと言えばソレまでですが・・。

この日から内大臣伊周と弟の権中納言隆家は参内しなくなります。

秋の除目(じもく)で藤原実資(秋山竜次)は権中納言、源俊賢(本田大輔)は参議、藤原行成(渡辺大知)は蔵人頭に昇進。 

©NHK

源俊賢は、伊周、隆家兄弟を訪ね参内を促します。しかし伊周と隆家は、当たり前ですが道長の妻明子の兄である俊賢を警戒します。

俊賢は、一条天皇に日々接する蔵人頭でした。兄弟は「天皇が伊周、隆家が参内しなければ右大臣道長に対抗する力が無く陣定での偏りを心配されている」という俊賢の言葉を信じたのです。

これは「内裏で右大臣道長が伊周を蔑ろにしている」という噂をたてさせないために道長が俊賢に命じたものでした。

流石というか、道長さん、すご~く政治的にも有能なのですね。

斯くして伊周、隆家は陣定に復帰。帝からの「若狭に宋の者70名が来着した件、定めよ」との下命を公卿たちは協議。

ききょう(ファーストサマーウイカ)が秋の日、まひろを訊ねてきます。そして右大臣道長の活躍ぶりを伝えましたが、まひろは宋の国の科挙制度に夢中です。

むしろまひろは、賢いききょうが深く敬愛する中宮に会ってみたいと望み、ききょうは中宮に話してみると約束しました。

そして中宮の登華殿に上がる事を許されたまひろは中宮定子と言葉を交わします。そこに突然一条天皇が現れます。

©NHK

中宮からまひろに政(まつりごと)への考えがあると聞いた帝は、まひろに「何でも思っているコトを述べてみよ」と申しつけます。

まひろは「宋の国には科挙という制度があります。下々の者が望みを持って学べば国が活気づき、高貴な方々も政を疎かにできなくなります」と応えました。

一条天皇は「そちも新楽府を読んでいるのか」と感心したのです。

・・・と言うコトは、一条天皇も白氏文集を読んでいたのですね。女好きの先代花山天皇とは、政治と女性への姿勢が根本的に違うのです。

道長は、一条天皇からまひろが天皇に対面し政への意見を述べた事を知り驚きます。

まひろの父為時に朝廷から「従五位下に叙す」と報せがきました。道長の計らいです。

伊周は、藤原斉信(道長の友人四人組の一人)の妹三の君(光子)のもとに度々忍んできています。

しかし或る日伊周が光子のもとに行くと門前に見事な牛車が駐まっていたのです。光子に自分以外に男がいたのか、と伊周は屋敷に戻りヤケ酒を飲みます。すると弟隆家が「その男を懲らしめてやろう」と兄を引っぱって斉信の屋敷に馬を駆けさせます。

僧形の男が屋敷から出て来たのを見て隆家は矢を射ます。その屋敷から出てきた男は、何と先の帝、花山院だったのです。

これが歴史に残る「長徳の変」という政変の始まりでした。

しかも花山院が忍んできたのは、伊周の相手三の君ではなく、花山院出家の原因となった女御忯子の妹、つまり三の君の妹でもある四の君だったのです。

嫉妬とは、手のつけられない感情ですが、勘違いして帝であった院に矢を射かけるとは、何人も許される道理がありません。

さて、政変の行方は? 次週が待ち遠しい!

余談ですが、花山院が忍んできた四の君は、後年道長の妾になります。また伊周の相手だった三の君(光子)は、道長の正妻倫子の父、ドラマでは変の時点で既に故人ですが源雅信(益岡徹)の妾となって何人かの子を残したという記録も残っています。

何と平安の世は狭い、というか、想像を絶する兄弟姉妹天国、というのか・・。(笑)

文:鉄道チャンネル住田至朗

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事