©NHK

2024年5月11日土曜日 NHK総合 22時~【土曜ドラマ】パーセント(1)「ただ、そこにいる」が始まりました。

ローカルテレビ局で、新米の女性主人公が障害者を登場人物にした学園恋愛ドラマを作るというかなり難しい設定です。今回は、この複雑なドラマの進行を理解するために丁寧に状況を追ってみます。

ドラマをご覧になった方は、気付きにくかった部分の補足に御利用ください。ご覧になっていない方は、ぜひNHKプラス、あるいはNHKオンデマンドでゆっくりご覧ください。

そして障害者という隣人とどの様に共に生きていくのか、制作者と一緒に考えてみましょう。

ドラマの舞台は「ローカルテレビ局Pテレ」です。

ドラマの進行を観ていて全く「クライアントのシバリ」が出てこないのは、民放というよりもNHK的なテレビ局ですよね。

主人公はバラエティ班APの吉澤未来(伊藤万理華)。

APはたぶん「アシスタント・プロデューサー」の略だと思いますが、ドラマ内では通常AD(アシスタント・ディレクター)の様な仕事をしています。もしかしたら最近は、ADと言わずにAPと呼ぶのかもしれません。

主人公は、高校時代に観て感動した学園ドラマに影響を受け、テレビ局に就職した様です。しかし、バラエティ現場での業務を上手く進めることができていません。

現場で手指に障害のある女性に吉澤は「写さない様に撮ります」と不用意なコトを言います。これが将来吉澤自身を苦しめるコトになります。 

©NHK

しかしそんな吉澤に編成部長の藤谷(橋本さとし)が「ドラマの企画が通った」と伝えます。ドラマ班に移動できると主人公は大喜び。しかし藤谷は「新しい局のプロジェクト「多様性月間」に従って主人公を障害者にして欲しい」と言います。

自宅に帰った吉澤は、恋人の町田(岡山天音)にドラマ企画が通ったと報告。彼は学生時代自主制作映画で脚本賞をとっていますが、今は映像とは関係ない世界にいます。

©NHK

企画書を障害者主人公に書き替えた吉澤は、ドラマ班のチーフプロデューサー植草(山中崇)、演出の羽座丘(小松利昌)、そして脚本家枡川(竹内宏樹)とミーティングをします。とにかく障害者の現場を取材することになります。

取材で、健常者の中で一人車椅子の高校一年生宮島ハル(和合由依)がバスケットボールをする姿を観て、吉澤は何か惹かれます。そして彼女に会いました。

ハルは、吉澤の企画書を見て

©NHK

「障害にめげず とか 障害を乗り越えて とか 書いてるけど 障害ある人が何かで壁感じる時って 社会の方に問題がアル。だからそれはその人が乗り越えるコトじゃ無い という考え方は今、高校生でも習う当たり前の事ですけど。それに健常者が車椅子を押しているイラストも「助けられている人」という感じで好きじゃない。」

と、否定します。

イージーに障害者を弱者として扱う脚本家にCP(チーフプロデューサー)の植草は「ハルちゃんは自信に満ちていた」と指摘。しかし脚本家は関心がなく、主人公候補の俳優も出してきました。

ところが、不倫騒動で脚本家と彼が推す主人公候補の俳優がドラマから突然降板。編成部長藤谷は「主役を障害者、当事者にやってもらえば」と言い出しました。 

©NHK

別の日、ドラマ班AP蘆田(結木滉星)とハルの出演する芝居を観た後 吉澤はハルにドラマ出演を頼みます。しかし・・・

「芝居には聾啞の女子校生も出ていた。私に出演を頼んだのは、車椅子という分かり易い障害があるからなんでしょ。せめて芝居を観て、良かったからとか言えば良いのに。吉澤さんはテレビ作る仕事むいてないんじゃない。障害そのものが利用したいというのならお断りします。」

とハルに再びそっぽを向かれます。

一方でハルは、劇団仲間から「障害者の俳優がドラマに出る希有なチャンスじゃないか」とせめられました。 

©NHK

自信を失う吉澤にAP仲間の蘆田は「車椅子だけじゃ無くて、ハル自身を良いと吉澤が思ったのなら難しいコトを考えずにもう一度あたってみたら」と助言します。 

©NHK

吉澤はハルの所属する劇団「S」の稽古見学に行きます。そこで劇団員が障害者を主人公にしたドラマを作る予定の吉澤にオーディションしてほしいと願い出ます。

短い芝居のテーマを求められた吉澤は「人生が変わった瞬間」と応えました。

ハルは「センス無い。やっぱり吉澤さんテレビ作る人に向いてない」と嘲笑。

劇団員の様々な表現を観る吉澤。

ハルは、車椅子で反対側を向いたままジッとしています。 

©NHK

そこに吉澤は、自分自身が高校時代に学園ドラマを観て救われ「人生が変わった瞬間」を感じとって感動します。

©NHK

その感動を伝えた吉澤にハルはドラマ出演を快諾、ただし劇団員もドラマに出演させることを条件にしました。

CP植草と一悶着ありましたが、編成部長藤谷から「多様性月間プロジェクトの委員会に改めてプレゼンしてくれ」を言われました。

プレゼン当日、新任の編成部長長谷部(水野美紀)に吉澤は「あなたには人間を描くという意識が欠如している」と言われてしまいます。

©NHK

あちゃ~。

確かに主人公は「剰りにも無防備・無意識で、何も考えていなさ過ぎ」です。

たぶんドラマの中で様々なコトに気付き学んでいく「Bildungsroman(ビルドゥングスロマーン=自己形成物語)」が進行するのでしょう。

しかし、クライアントの利害関係が第一で、それが錯綜する民放で障害者は、扱いにくい微妙なテーマかもしれませんね。

頑張れNHK!

文:鉄道チャンネル住田至朗

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事