「大渡海」完成 辞書編集部は 新しい航海に出ます

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NHK BS 2024年4月21日(日) 22時 「舟を編む~私、辞書つくります~」(10)、最終回です。

以下、ネタバレ満載です。ドラマを見逃した方は「NHKオンデマンド」でご覧になってから御笑覧くださいませ。

エニウェイ、オリジナル小説や劇場版映画では、時代的にコロナ・ウイルス感染拡大・パンデミック禍は存在しませんでした。

2020年(令和2年)初頭に日本国内での新型コロナ・ウィルス感染者が発生しました。春には全国で小中学校が臨時休校となり、全国に緊急事態宣言が発出されます。マスクの奪い合いなど正にパニック状態でした。2020年の東京オリンピック開催が延期されたのもこの頃でした。

NHKドラマでも香具矢(美村里江)の店は客が激減し休業。失業状態の香具矢は京都で修業した師匠の店に二代目育成の名目で長期間滞在することになったのです。馬締(野田洋次郎)はこれを受け入れられません。 

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感染拡大は瞬く間に拡がり2021年(令和3年)夏には感染者数の累計が100万人を越えます。このパンデミック下で東京オリンピックは強行されました。

2023年になって国内の累計感染者は3千万人を越え、死者数も8万人を越えました。しかし、3月に厚生労働省がマスク着用は個人の判断と発表。5月には新型コロナ・ウィルスは感染症法での扱いが5類に移行し、徐々に落ち着いた状況になりつつあります。

コロナ・ウイルス・パンデミック下の3年間、学生達は、入学式も無く、授業はリモート、サークル活動も、学友達との交流も無い日々を過ごしました。小・中の義務教育はもちろん、ほとんどのの高校生たちも修学旅行に行けなかったのです。そして卒業式も・・・。

マスクで表情は隠され、お互いの闊達なコミュニケーションが困難な時間を過ごさざるを得なかった小学生から大学生までの若者達。給食中は默食で会話は禁止。これらが健康的な成長の阻害要因にならなければ良いと識者たちも心配しました。

新しく社会に出た人たちも、入社式、OJT(on job training)など通常のプロセスが無く、リモート業務で社員間のコミュニケーションは希薄になりがちでした。

この様な状況下で「大渡海」の校了、刊行が進行しました。

しかしNHKドラマの最終回では、原作小説や劇場版映画で悲劇だった松本先生の死去は無く、元気な松本先生の姿を最後まで観ることができました。 

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個人的には、こちらのハッピーエンドの方が嬉しいと感じます。

一方でコロナ・ウイルス・パンデミックにより今まで人口に親炙していなかった言葉が多く使われることになりました。しかし校了までのスケジュールはパンパン。しかしあけぼの製紙の宮本(矢本悠馬)が追加の印刷機を確保したコトで僅かの時間的余裕が生まれます。

玄武書房辞書編集部は、入院中の松本先生(柴田恭兵)の指示の下、急遽コロナ・ウイルス・パンデミックに関連する見出し語を追加する作業に取り組みました。 

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実は、劇中でコロナ・ウィルスの名称の由来がウィルス粒子の形態が太陽のコロナの様に見えることからというコトを筆者は初めて知りました。

みどり(池田エライザ)は馬締に言葉の力を訴え、馬締は京都に出発する香具矢を見送りに行きます。

「新型コロナ・ウィルスによって人々が分断されてしまった今、

まさに言葉の力が試されているのかもしれません。」

入院する松本先生からのメールの言葉(上記)にも、馬締は励まされたのです。

コロナ・ウイルス・パンデミック下で様々な苦労をしたり、当たり前の経験をすることができなかった若者たちへの少し遠回しですが応援の言葉とも感じました。

「大渡海」刊行祝賀会、会場にリモート(LIVE)で流される松本先生の挨拶が、このドラマ10回分の素晴らしいまとめ、登場人物へのメッセージになっているのも感動的でした。

辞書編集部はまた新しい辞書作りに邁進するところでドラマは大団円。

いやぁ、面白かった!

文:鉄道チャンネル 住田至朗

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