河童の持つ徳利? いえ 赤ちゃんの天然パーマです

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「大渡海」の紙担当になった岸辺みどり(池田エライザ)は、早速辞書編集部で様々な辞書の紙、匂いを嗅いでみます。

これ分かりますね。筆者は輸入盤のアナログ・レコードを買うとそのジャケットの匂いを嗅ぐのが好きでした。

あけぼの製紙で営業の宮本慎一郎(矢本悠馬)と打合せをするみどりがトップ画像です。

「大渡海」刊行までのスケジュールを確認して、テスト抄造(試作品を作るために工場の抄紙機を占有する)チャンスがあと2回だと分かります。

電話で業務報告したみどりは、馬締(野田洋次郎)から直帰して良いと言われます。宮本は「経費で摂待します」と食事に誘いました。

そこでみどりは、宮本を香具矢(美村里江)が料理長をする神楽坂の小料理屋「月の裏」に案内します。

香具矢が馬締の奥さんと知って驚く宮本。二人は、香具矢の料理に舌鼓を打ちました。

このシーン、空腹で見るとツラいです。マジで香具矢さんの料理、美味しそうです。業界的に言えば「優秀なフード・コーディネイター」ですね。

辞書編集部には「見出し語チェック」の助っ人に天童(前田旺志郎)の大学の後輩たちがやってきます。国文科の学生ですが天童流の「押忍!」なのです。

一方、蕎麦屋で蕎麦をすする松本先生(柴田恭兵)と社外編集者の荒木(岩松了)。馬締という「辞書の申し子」が荒木の後継者になったこと、そして今度は馬締が岸辺みどりを育てて「辞書の申し子」にすることを二人で喜びます。松本先生は「申し子」の本来の意味である語釈③も含まれているね、と笑います。

※申し子 「大渡海」の語釈① ある分野で、優れた能力を持つ人

             ③ 神仏に祈り、授かった子

学生バイトの助太刀で前回とりかかった他社辞書の改版「見出し語チェック」作業が終わり、辞書編集部は、「大渡海」編集作業を再開。要再検討図版の会議になります。  

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そして「河童って徳利もってたっけ?問題」になりました。 

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続いて「赤ちゃんが全員天パ問題」。図版の赤ん坊が天然パーマで描かれていたのです。

修正する図版を描いた画家に佐々木(渡辺真起子)が連絡すると、既に亡くなっていました。御子息もイラストレーターということで息子さんに修正を依頼します。

みどりは辞書編集部に打合せに来た息子さんに、亡くなったお父さんの図版に手を入れることに抵抗はないか訊きます。息子さんは「父は自分の絵に愛情やこだわりを全くもたなかったので何の抵抗もありません」と応えます。

こだわり ①心が何かにとらわれて、自由に考えることができなくなる。

     気にしなくてもいいようなことを気にする。 

     ④他人からの働きかけをこばむ。なんくせをつける。

つまり本来は悪い意味で使われる言葉でした。

しかし俗用で「匠のこだわりの一品」の様に最近では専ら良い意味で使われます。

※俗用 

本来の意味とは違う使われ方が広まり、そちらの意味の方が一般的になった言葉の使われ方(馬締さんの説明)

修正された図版は編集部OKでした。でも馬締とみどりは、亡くなられた図版画家の家を訪ねその仏壇に参ります。

息子さんは、油絵を描いていますが、生活のためにイラストを描いていると話します。そして自分も、亡くなった父と同じでイラストで生活していると自嘲します。亡くなった父親も油絵では食えず、母も出ていって、食うために安い仕事も断らない父は忙しくて一緒に遊んだ思い出もない、と嘆きます。そんな父の生き方が嫌だったとも。

馬締は、言います。

亡くなった父親は「こだわりを持たないことにこだわった」のではないか。辞書の図版こそ作家性(=こだわりを持つこと)ではなく「そのものの本質を適確に描く技術=こだわりを持たないこと」が求められるのです。

辞書が改訂されても「見出し語」がなくならない限り図版はほとんど辞書に使われ続けます。時代に合わせた修正が必要な場合は(父親ではなく)あなた(息子)がいるから安心です。息子と亡くなった父親の「こだわりのない合作」は辞書の中に残り続けます。

馬締の言葉に息子は父親への思いが少し変化した様でした。

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みどりは仏壇の写真が横顔の理由を尋ねました。息子さんは正面の写真が無かったからと赤ん坊の自分を抱く亡くなった父親の写真を見せます。

ここで「赤ちゃんが全員天パ問題」を思い出したみどり。

図版の赤ん坊がみな天然パーマで描かれていたのは亡くなった図版画家の「息子へのこだわり」だったのです。

送られてきた赤ちゃんの図版を見て泣く息子さんはとても嬉しそうでした。

今回は恋愛ではなく親子の愛情がテーマでしたね。

実はみどりも父親と離婚した母親に屈折した想いを持っているようなのです。

それは謎です。

しかし言葉って微妙ですねぇ。このドラマを見ているとふだん何も考えずに喋っているコトがちょっと恐くなります。くわばらくわばら。

文:鉄道チャンネル住田至朗

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