第2回は、恋して 愛すること と 恋愛の違い 分かりますか?

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NHKドラマ『舟を編む』の第2回が2月25日日曜日、22時から放送されました。

筆者は、三浦しをんさんが書いた原作の小説『舟を編む』と2013年(平成25年)に公開された劇場映画『舟を編む』が大好きです。

しかしNHKドラマの『舟を編む』は、原作小説や劇場映画と、時代設定が微妙に違います。また登場人物たちの「ドラマ」も原作小説や劇場映画に無かった展開がある様です。

第1回では、7月にファッション誌編集部から辞書編集部に異動した岸辺みどり(池田エライザ)は、辞書作りの不思議な世界に戸惑ってしまいました。

みどりは、自分の「不注意な言葉使い=話し方」が原因で会社の同僚たちから仲間外れにされたり、同棲相手に去られてしまったことに気付くのです。

以前に同棲相手と行った海辺で朝日が登るのを観て泣いたみどりは、始発電車で自宅に戻り、徹夜での出社を躊躇します。

しかし上司で辞書作りの権化の様な馬締(野田洋次郎)に「右という言葉の自分だけの語釈」を伝えたくなり、意を決して出社しました。

第2回では、他社から出た小型辞書の改訂版チェックの作業が始まります。

とにかくシーンの細かいニュアンスを含めてドラマの展開を左右する要素がちりばめられているので、細部までしっかり見ていきたいと思います。

ネタバレや筆者の想像も含まれますが御宥恕ください。

とにかく「改訂版チェック」は異様に細かくてタイヘンな作業です。

如何にタイヘンなのか、作業内容をまとめてみました。

馬締が説明してくれますが、主人公の手元には

「A」 他社小型辞書 第4版(改訂前)

「B」 同 第5版(改訂新版)

「C」 主人公たちが作っている中型辞書「大渡海」「見出し語リスト」=大渡海リスト

が並べられます。これらで調べる対象・要素は以下です。

〇「見出し語」ユーザーが辞書で調べる言葉

〇「語釈」「見出し語」の意味

〇「用例」「見出し語」の使い方の例

ちなみに「見出し語」「語釈」「用例」のセットを辞書の「項目」と呼びます。

馬締の言う「作業」は、次の①から⑤。

①「第5版」にあるが「大渡海リスト」に無い「見出し語」を「第5版」に蛍光ペンで印

②「第5版」にも「大渡海リスト」にも載っている「見出し語」を「大渡海リスト」に印

③「第4版」になく「第5版」に新たに追加された「見出し語」を「第5版」に印

④「第5版」で「第4版」と「語釈」が変わった「見出し語」を「第5版」に印

⑤「第5版」で「第4版」から削除された「見出し語」を「第4版」に印

つまり、改訂された辞書と改訂前の辞書を細大漏らさず読み比べその差異を抜き出します。さらに「大渡海リスト」とも照合するのです。

書いていてもタイヘンな作業です。でもこれが「辞書を作る」ということの「基本」でもある様です。

先輩ですがバイトの天童(前田旺志郎)が ア行 カ行 サ行を自分から進んで担当。主人公は タ行 以下に取り組みます。

徹夜明けのみどりは、2時間作業に没頭して、2ページがやっとでした。このペースで作業完了までの時間を計算するみどり。何と「5ヶ月もかかる!」とショックを受けます。

しかし馬締は「馴れればペースは上がります。夏休みになれば学生バイトも来ます。」「まぁ2ヶ月もあれば終わります。」と余裕です。

そこへ製紙会社の営業の宮本(矢本悠馬)が「大渡海」専用の見本紙を持って現れます。みどりは、辞書のために新たに紙から開発するコトに驚きます。しかも馬締は「紙にヌメリ感がない」とダメを出します。

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忘れ物をした宮本を追いかけてきたたみどりは、4月に前任者から担当を引き継いだ宮本が「何故、3ヶ月で辞書専用の紙に夢中になれるのか」不思議に感じたので尋ねます。

ここは、今後の展開に重要なシーンです。・・・というかこのドラマには「重要じゃないシーン」がほとんど無いので「リンダ困っちゃう」んですが。(笑)

宮本は「実は ぼくも別に紙が好きじゃないんです。」「でも辞書作りが大好きな馬締さんを見ているとスキを仕事にするって良いなぁと思って。」「それで馬締さんのマネをしているんです。」

不思議がるみどりに宮本は「星の王子さまにちょっと引っかかる言葉があるんです。」「君がそれを好きなのは それのために時間を使ったからというのです。」

みどりは「それって逆でしょ?」「ぼくもそう思ったんです」と宮本。

「岸辺さん 試してみませんか?」「これから「大渡海」の完成までの3年間 ぼくは紙に 岸部さんは辞書に時間を使って それで仕事の紙や辞書が好きになるかどうか。」

原作小説や映画版では、今後この二人は・・・・。う〜ん悩ましい。

仲間外れにされた元同僚と顔を合わせるのが苦痛なのでみどりは辞書編集部で一人でランチを食べます。馬締が心配して声をかけます。みどりは「単なる失恋」と告ります。

みどりが「ちゃんと恋愛できていなかったかも 自業自得なので諦めなきゃと思う」と言うと 馬締は「諦めるなら あきらめて あきらめて あきらめて欲しい」と謎の言葉を伝えました。

昼休みが終わってデスクに戻ったみどりは「恋愛」という言葉を複数の辞書で端から調べます。疑問を持ったみどりは「大渡海」に載せる「恋愛」の「語釈」を馬締に見せてもらいます。

「何で恋愛は、異性間、男女間に限定されているのか」と問うみどりに、馬締は「辞書の語釈には典型的例が必要」と答えます。

ここで馬締は、辞書編集部の天童、佐々木(渡辺真起子)にも声をかけ「ウサギの絵とその特徴を表す動詞を書いて下さい」と言います。トップの画像はこの場面です。

ウサギの絵の横に「ぴょんぴょん」と書いたみどりに「それは副詞」と佐々木。(笑)

馬締に「全てのウサギの共通点」を問われ、みどりは「耳が長い」と答えます。

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ウサギを辞書で調べると「耳が長く よく跳ねる」と書いてあります。馬締は「耳の短いウサギや跳ねないウサギもいるかもしれませんが 多くの人がイメージするウサギは耳が長くピョンピョン跳ねるんです。」「これが典型例です。」

しかしみどりは「典型例に含まれない者は 辞書という舟に安心して乗るコトができない」と食い下がります。

改めて「大渡海」監修の松本先生(柴田恭兵)と社外編集者の荒木(岩松了)が加わった会議が開かれます。

みどりは「恋愛」と別に「同性愛」「両性愛」が項目として在ることに違和感を感じます。

松本先生や荒木たちと話し合う中でみどりは「恋愛」という言葉に「感情論ではない根拠」と「異性という言葉を外しても成り立つ語釈」を書く様に言われます。

「恋愛」の「語釈」に向き合うみどりは「恋」と「愛」の「語釈」も読み込みます。そして「愛」とは「相手」を「思いやり」「大切」にして「安心」させることと知ります。

天童からのメールで「LGBTを取り巻く環境と対応」の記事を知ります。

ちなみに「LGBT」は以下の言葉の頭(かしら)文字を組み合わせた言葉です。

L=Lesbian

G=Gay

B=Bisexual

T=Transgender

・・・というか筆者は、日本語の「両性愛」という言葉を知りませんでした。

「両性愛」ではなく「バイセクシャル」とか「両刀使い」「AC/DC」(※)「クイア」等と筆者は呼んでいました。

※オーストラリア出身のバンド。大好きなロック・ミュージック。しかしバンド名からデビュー時はゲイバーからの出演依頼が殺到したとか。(笑)

閑話休題。

昇平(鈴木伸之)から電話があって夜の公園で二人は会います。

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みどりは昇平に「恋はあったけど 愛ではなかった」と謝ります。対する昇平も「それを分かって甘えていた」と謝ったのです。

画面に辞書の「見出し語」と「語釈」がスーパーインポーズされる場面がドラマのクライマックス・シーンです。

あい【愛】(名)相手をいつくしむ心。相手のために良かれと願う心。

馬締がみどりに言った「あきらめる」の「語釈」が3つ。

①「明らめる」物事の事情・理由をあきらかにする。

②「諦める」望んでいたことの実現が不可能であることを認めて、望みを捨てる。断念する。思い切る。

③「明らめる」心をあかるくする。心を晴らす。

みどりは②の意味しか知らなかったのです。

こい【恋】(名)人を好きになって、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち。

改めて松本先生、荒木が出席する編集会議で「恋愛」の「語釈」を発表するみどり。

みどりは辞書の「右」の「語釈」に「箸を持つ方」とは書かれていないことを言います。そして日本のLGBTが左利きと同じ割合で存在するという再診の調査結果を示します。

松本先生は「それがどのくらい世に浸透しているかが問題」と指摘した上で「「ギリギリまで言葉を観察し話し合い3年後の「大渡海」刊行時に結論を出しましょう。」「それまでは岸辺さんあなたが灯台守です。」

屋上でランチをする天童にみどりは缶飲料を渡して礼を言います。そこで天童からも礼を言われるのです。これはこの場面を見てください。

みどりは昇平と住んでいたマンションを引き払い馬締が奥さんの香具矢(美村里江)と暮らす「早雲荘」に引っ越します。

主人公が早雲荘に住むというのは原作小説にも、映画版にも無かった?!

こりゃ、新しい展開が楽しみです。

文:鉄道チャンネル 住田至朗

『舟を編む』

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