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さて前半ではブラジルのサンパウロでCPTM(Companhia Paulista de Trens Metropolitanos)サンパウロ都市圏鉄道に乗りました。CPTMの終点リオグランデダセーハ駅を越え普段は貨物列車しか走らない非電化区間を走る観光列車に続き、番組後半に入ります。

玉木さんは広大なブラジルの北側、赤道に近い大西洋に面した港町サンルイスにサンパウロから飛行機で3時間もかけて移動します。とにかくブラジルは広大な国なんです。

17世紀にフランス人が作った町サンルイには、ジャングル奥地のカラウアペバスまでの900kmを15時間かけて結ぶカラジャス鉄道があります。ブラジルでは最も長い距離を走る旅客列車が週に3往復運行されているのです。

ちなみに「サン〈聖〉ルイ」は、フランス・ブルボン家のルイ王朝を称える名称でしょうか。

※前回終わりに「後半はコロンビア」と書きましたが、すみません、修正します。コロンビアに行く前にブラジル北部サンルイスでブラジルとしては長い距離を走る鉄道に乗ります。

ブラジルは、広大ですが鉄道の総延長は、国土が23分の1しかない日本と同じ3万キロ程度なのです。しかもブラジルでは鉄道のほとんどが貨物輸送に使われ、旅客輸送は都市近郊に限られています。

カラジャス鉄道は、道路が未整備なジャングル地帯に住む住民の大切な移動手段になっています。

とは言え、カラジャス鉄道の主な役割は、1985年にジャングルで創業した鉄鉱石埋蔵量世界一というカラジャス鉱山の鉄鉱石、年間1億トンをサンルイスの港に運ぶことなのです。

1億トン! 

この膨大な鉄鉱石をカラジャス鉄道は、108トン積みの貨車330両(途中に補助のディーゼル機関車をはさんだ)全長3,500メートルという世界最長の貨物列車で鉱山から港までの900kmを運ぶのです。

単純計算で1編成35,640トンの鉄鉱石を運びますから、年間1億トン運ぶには、2805編成、つまり1日あたり7本の運転が必要になります。番組では、500両の機関車と23,000両の貨車が24時間働き続けていると伝えていました。トップの画像はそのディーゼル機関車です。

3500メートルもある長大な貨物列車が1日7本も運行されます。これが旅客列車が週3往復しかできない理由です。貨物列車ファンではなくても、この長大な列車を一度は眼にしてみたいものです。

玉木さんは、ブラジルから飛行機で8時間、南米大陸北部の国コロンビア第二の都市メデジンに飛びます。

コロンビアという固有名は、私たち日本人には、コーヒー豆の名前(原産国?)、あるいは電器(オーディオ)メーカーの名称、レコード会社のブランド名として人口に膾炙しています。

しかしコロンビア(共和国)という国に関して筆者は、正直ほとんど何も知らないと言っても過言ではありません。教科書で読んだ記憶もほとんど残っていません。

玉木さんが訪問した都市メデジンも、筆者はかつてTVニュースなどを騒がせた「世界的麻薬組織=メデジン・カルテルが支配した都市」としか分かりません。

メデジンは、人口250万人、アンデス山脈の盆地にある標高1,500メートルの高原都市です。富裕な人々は平らな盆地の中心部に住み、山の斜面にスラム街が広がっています。

玉木さんは町を散策。公園ではメデジン出身の世界的彫刻家フェルナンド・ボテロの彫刻に魅せられます。中に破壊された鳥の彫刻がありました。20年前に麻薬王パブロ・エスコバルの起こした爆弾テロによって子供や妊婦を含む50人以上が死傷した現場にあった彫刻です。

彫刻家ボテロは、破壊されていない鳥の彫刻をその隣に並べることで「暴力の恐怖や不条理を人々の記憶に刻みつけることができる」と語っています。

玉木さんはメデジン・メトロ(Metro de Medellin)に乗ります。この電車は平らな部分を走っています。

斜面や丘の上に住むスラム街の人々は、市街地に行くためにバスを乗り継ぎ2時間以上かかっていました。そのためスラム街の人々は働く事が出来ず、貧困が助長され犯罪が蔓延するという悪循環に陥っていたのです。

それを劇的に解決したのが新しい公共交通機関のロープウェイ「メトロカブレ(Metrocable)」でした。6つの路線が斜面に広がるスラム街をカバーしたのです。

今までバスを乗り継いで2時間以上かかっていた市街地へのアクセスが僅か20分に短縮されました。こうしてスラム街の住人は市街地で職を得ることができ、貧困から脱出できたのです。治安も劇的に良くなりました。

玉木さんはスラム街を訪れる観光客を案内するガイドのサンドラさんとスラム街を歩きます。サンドラさんはスラム街で生まれ育った25歳。ガイド料は1,500円ほどです。

かつては麻薬王が支配しメデジンのスラム街でも最も危険なエリア(・・・おそらく世界で最も危険なエリア?)だった「コムナ13地区」も2002年政府軍により犯罪組織が一掃され、今は観光客相手のお土産屋が並ぶ平和な地区になっています。ビルで28階ぶんもあった「コムナ13地区」の急な階段も屋外エスカレーターが整備され僅か6分の行程になりました。大勢の観光客の足にもなっています。

次回「玉木宏が行く 遙かなる南米鉄道の旅(3)」では鉄道王国と言われたパラグアイ、アルゼンチンでは天空を行く列車に乗ります。

3月2日土曜日 19時半からNHK BSです。

文:鉄道チャンネル住田至朗

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